川内原発仮処分即時抗告審第2回審尋期日の報告

2016/02/02

1月29日、福岡高裁宮崎支部201号法廷にて、第2回目の審尋期日(非公開)が行われた(西岡知一郎裁判長)。前回期日に引き続き、12:45から、抗告人(住民側)から避難計画、その後、相手方(九州電力)より地震動、抗告人から地震動、最後に火山について、主張・立証について説明を行った。

福岡高裁宮崎支部に入る弁護団

裁判所に入る弁護団ら

避難計画については原決定においても、適切な避難計画が策定されていないまま原発を稼働させる場合には人格権侵害またはそのおそれがある旨を認めている(原決定183頁)。国際基準は4層(過酷事故)、5層(防災)について独立して対策を要求しているにもかかわらず、新規制基準には防災計画は含まれていない。前回の九電の説明は、基本的には3層までで足りるかのような内容である。規制基準に適合しているからといって、決して安全とは言えないのだという点について、後藤好成弁護士より、段階式避難が机上の空論に過ぎないこと、避難のためのバスの数の圧倒的不足や弱者対策などを福島第一原発事故での実例も挙げて説明した。

期日後の記者会見で、実効性のない避難計画なしで原発の再稼働は認められないと説明する後藤弁護士

期日後の記者会見で、実効性のない避難計画なしで原発の再稼働は認められないと説明する後藤弁護士

引き続き九電社員により、耐震設計の概要、基準地震動を用いた耐震安全性評価と評価結果、原発における安全確保について説明が行われた。

これに対し、抗告人からは、耐震安全余裕については、中野宏典弁護士より、原子力関連法規制の趣旨は、福島第一原発事故のような過酷事故は二度と起こしてはいけないという点にあるところ、事業者側に全面的に安全性を説明すべきであり、住民側からの考慮すべきことを事業者側が考慮したか、それが科学的に合理的かの指摘があれば、これにきちんと答えるべきであり、それが伊方最高裁判例の趣旨とも合致するのだと説明した。そして、後藤政志さん(元・東芝原子炉格納容器設計者・博士)より、格納容器破壊の加圧試験の映像を紹介し格納容器の健全性を保つ重要性を示したうえ、九電の主張する「安全余裕」とは、材料力学において必要不可欠な安全代(あんぜんしろ)であって、余裕などとは呼べるものではないことを具体的に指摘した。引き続き、工藤弁護士より前回の九電のプレゼンに対する反論、長沢啓行先生より川内原発の基準地震動に関して前回の補足説明を行った。

最後に、火山物理学の専門家を迎え、甫守弁護士と共に九電の火山影響評価の問題点を説明した。具体的には九電のいう「周期性」はデータを恣意的に用いたもの(鬼界・阿蘇を除いた)で、明らかに過小評価であること、引用した論文は自分たちの都合よくつまみ食いしたものであることを述べた。また、専門家自身が阿蘇で火山灰の中でエンストを繰り返した経験を紹介し、火山灰は精密機器に多大な影響を与えるところ、15センチの火山灰に原発は耐えられないこと、原発事故被害の大きさを考えれば曖昧な根拠で原発が安全であるとは言えないと説明した。

期日後の記者会見で、火山のプレゼンについて説明する海渡雄一弁護士(中央)

期日後の記者会見で、火山のプレゼンについて説明する海渡雄一弁護士(中央)

最後は海渡雄一弁護士より約60分にわたる火山についてのプレゼンが行われた。冒頭に30年にわたって原発訴訟に携わってきたが、専門家の協力を得ることが難しかったところ、火山については、本日出席していただいた火山物理学の専門家や、東大地震研究所前所長の小屋口教授をはじめ火山学の専門家の協力が得られたことに触れ、火砕物密度流が到来した場合と大量・高密度の火山灰が到来した場合についてそれぞれどのような本件原発に具体的な危険が存するかを説明した。

そして、審尋全体のまとめとして、抗告人らの主張は、ごく基礎的な科学的発想に立って相手方主張の科学的不合理性を指摘するものにすぎないのであって、裁判所は、双方の主張のいずれが科学的に正しいのかを判断する必要はなく、人格権侵害予防の観点から、法の趣旨である「災害を万が一にも起こさない」といえるだけの十分な検討を相手方がしたか、検討漏れがないかを判断するだけでよいこと。説明を通じて、地震・火山のいずれについても極めて深刻な検討漏れがあることが裁判所にもご理解いただけたと思うのであって、福島原発事故被害への想像力を持ち、法曹としてのごく常識的な判断を行えば、必ずや正しい結論が導かれると信じているとして熱弁を終えた。裁判所は相変わらずのポーカーフェイスを崩さなかったが、熱心にプレゼンを聴いていた。

18時近くに審理は終了した(時間が延びたのは、裁判所からの質問時間を予定に組み入れていなかったためである)。裁判所は、決定に向けての作業を始めるので、補充の主張については、2月中旬、遅くとも2月末までに提出するようにと指示した。また、抗告人からのこれまで主張に対して、相手方がこれに反論するかは任せるとした。

もっとも、火山については今回の審尋における特に火山灰について、①大気中の濃度について、九電が規制委員会に適合性申請で説明、シミュレーションしているものと異なる、②九電の主張する12.5cmについての根拠を必要なら明らかにするように、これについて認否反論は2月14日までにするように、抗告人には再反論の機会を与えますと伝えた。

その他については、双方から必要な主張は出ていると裁判所は考えているので、決定日は速やかに相当な余裕を持って伝えるとして審尋期日は終了した。

終了後は宮崎県弁護士会館で記者会見が行われた。

期日後の記者会見(宮崎弁護士会館)

期日後の記者会見(宮崎県弁護士会館)

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抗告人と弁護団が出席し、審尋の内容が説明がなされたほか、早ければ年度内には決定が出る可能性がある、後世に恥じない決定がなされると確信していると述べた。

奇しくも高浜原発3号機の再稼働が報道されていたが、脱原発弁護団全国連絡会の共同代表も務める河合弁護士からは、大津地裁に係属している高浜原発3・4号機の仮処分に関して、年度内にも決定がなされる予定であるところ、実際にまた止まる可能性もあり、一喜一憂しないで闘っていくと言い切った。


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