脱原発弁護団全国連絡会結成と原発訴訟参加の呼びかけ

2011/09/12

法学館憲法研究所に事務局長の只野靖弁護士が書かれた記事を紹介します。

以下、リンク記事より引用。

http://www.jicl.jp/old/hitokoto/backnumber/20110912.html

  2001年に弁護士登録し、2番目の大型事件が浜岡原発運転差止事件でした。以来、原発訴訟にかなりの時間を使ってきました。現在は、大間原発運転差止事件、上関原発公有水面埋立免許取消事件も手伝っています。

 原発事件は確かに大変な事件です。内容が超専門的で、記録は膨大、従って、取られる時間も膨大です。勝てば、そんな苦労も吹っ飛ぶでしょうが、現実には連戦連敗です。

 2007年10月、静岡地裁(宮岡章裁判長、男澤聡子裁判官、戸室壮太郎裁判官)で、浜岡原発の差止裁判の判決がありました。次の東海地震が安政東海地震の揺れ以下に収まる保証はない(石橋克彦神戸大学名誉教授・地震学)、老朽化した原発はひび割れが不可避で点検でも見落とされるため耐震安全性は低下する(井野博満東京大学名誉教授・金属学)、設計者にとって許容値は絶対であり、許容値を超えた安全余裕など考えてならない(田中三彦氏・元原子炉圧力容器設計者)、という当代最高水準の証人を得て、原告側の立証は、被告中部電力のそれを圧倒しました。

 しかし、結果は敗訴。
「(地震について)確かに、我々が知り得る歴史上の事象は限られており、安政東海地震又は宝永東海地震の歴史上の南海トラフ沿いのプレート境界型地震の中で最大の地震でない可能性を全く否定することまではできない」 「しかし、このような抽象的な可能性の域を出ない巨大地震を国の施策上むやみに考慮することは避けなければならない」(判決114頁)
「(地震時には安全システムも同時に故障するという原告の主張について)しかしながら、全体として本件原子炉施設の安全性が確保されるのであれば、安全評価審査指針が定めるように、安全設計審査指針に基づいて別途設計上の考慮がされることを前提に、内部事象としての異常事態について単一故障の仮定による安全評価をするという方法をとることも、それ自体として不合理ではない。そして、原子炉施設においては、安全評価審査指針に基づく安全評価とは別に耐震設計審査指針等の基準を満たすことが要請され、 その基準を満たしていれば安全上重要な施設が同時に複数故障するということはおよそ考えられないのであるから、安全評価の過程においてまで地震発生を共通原因とした故障の仮定をする必要は認められず、内部事象としての異常事態について単一故障の仮定をすれば十分であると認められる。したがって、原告らが主張するようなシュラウドの分離、複数の再循環配管破断の同時発生、複数の主蒸気管の同時破断、停電時非常用ディーゼル発電機の2 台同時起動失敗等の複数同時故障を想定する必要はない。」(原判決106頁)

 しかし、この判決が誤りであったことは、もはや解説の用はないでしょう。
福島原発事故を経験した今、私たちは、原発とは共存できないことは明らかです。

 その後、浜岡1、2号機については、中部電力が自ら廃炉とすることを発表しました。そして、福島原発事故後、菅直人前首相は、30年以内にM8クラスの地震が発生する確率が87%であることを理由として、残る3、4、5号機について、中部電力に停止を要請し、中部電力もこれを容れた結果、浜岡原発は全て停止しました。
訴訟では負けましたが、浜岡原発の危険性を訴え続けてきたことが、こうした結果に結びついたと思います。

 浜岡原発訴訟は、東京高裁で審理中です。中部電力は、津波対策として防潮堤を築くとして、原発の再稼働をあきらめていないからです。また、大間原発は工事進捗率30%で建設中断、上関原発も埋立工事は中断していますが、まだ気を抜くわけにはいきません。さらに、我が国は世界一の地震国であり、全ての原発が、福島と同じ事故に至る可能性があります。

 7月16日、「あらゆる思想や社会的立場を乗り越え、脱原発の一点において団結」して、原発訴訟に取り組むべく、弁護士100名以上の参加を得て、脱原発弁護団全国連絡会を結成しました。これから原発訴訟に取り組んでみたい、という方、大歓迎です。問題の原発は、全国にまだまだたくさんあります。是非、ご連絡ください。

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