能登半島地震の爪痕をゆく
本年元日の能登半島地震、9月の豪雨は、能登半島に甚大な被害をもたらしました。被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く元の生活を取り戻せるよう祈念いたします。
2024年8月25日(日)、脱原発弁護団全国連絡会の有志が、能登半島地震を受けて、現地視察をしました。JR金沢駅を朝9時に出発し、能登半島の先端まで行き、夜7時頃に同駅へ戻ってくるという合計10時間にわたる強行軍でした。
当日は、現地への案内や現地での説明など、志賀原発運転差止訴訟の弁護団、原告の方々、支援者の方々、地元の方々の多大なるご協力をいただきました。この場を借りまして、心より感謝申し上げます。
以下、簡単ですが、視察報告になります。
志賀原発に隣接する団結小屋である。40年ほど前まで毎週のように泊まり込みで使われていた、志賀原発を監視する小屋。
ここから風船を飛ばしたところ(放射性物質の拡散状況を調査)、名古屋や、遠いところでは水戸、柏崎まで飛んで行ったとのこと。
領家漁港は、富来川南岸断層とぶつかる地点である。
富来領家漁港付近は、数10cmの隆起があった。テトラポットの奥の岩場は、地震以前は見えなかったとのことである。
トンネルの上の崖は、能登半島の隆起を繰り返した歴史だという。隆起の時期によって色が違う。
この崖の表面は凸凹して口を開けているように見えるが、これは海蝕崖(かいしょくがい)と言われ、波によって削られて形成された。その後、地震による隆起で繰り返し持ち上がって行った。つまり、ここは隆起をする場所であり、能登半島は地震と隆起を繰り返している場所であるとのこと。
志賀町立富来(とぎ)小学校は、一部を改造して(赤色〇の辺り)、志賀原発事故に備えた放射線防護施設とされている。
しかし、今回の地震によって倒壊のおそれがあるとのことで、防護区画への立入不可とされ、1月30日に避難所としても閉鎖された。
青色矢印の辺りは、仮設住宅を建設中であった。
黒島漁港で3m以上の隆起をした防波堤。防波堤の上半分の黒い部分が地震前の防波堤の高さで、白い部分が地震によって隆起した部分。
なお、この時は、地面にたたきつける土砂降り、繰り返し轟く雷鳴の中での視察であった。
若山町中地区。断層崖(だんそうがい)が水田等に出現した現場。ここは地震前は平地だったが、今回の地震によって、これだけの段差が生じている。この辺りの約7kmにわたって断層崖が出現したとのこと。
金沢大学等の掘削調査が始まるので、現状が見られる貴重な機会であった。
当該断層崖ではU字溝が大きく持ち上がっている地点があった。赤色丸印の部分が持ち上がった部分のU字溝(おそらく水田へ水を引くためのU字溝)。
U字溝は1m20cmほど持ち上がっていた。
当該断層崖の別の場所は、1m60cmから80cmほど(中央の棒の黒い帯部分が1m。赤色・白色が20cm幅)隆起していた。
また地中に埋められていた配管が地上に突き出ていた(青色丸印部分)。
高屋漁港へ向かっている道中では、倒壊したままの家屋が多数、そのままになっていた。地震から8か月経過しても、解体が進んでいない様子。
高屋漁港では、塚本真如氏(圓龍寺住職)から、今回の能登半島地震による被災状況、また珠洲原発反対運動についてご説明いただいた。
原発反対運動では、原発推進派の人格を否定しないこと、反対派が原発建設予定地を共有したことなどをお話いただいた。
高屋漁港。珠洲原発の建設予定地のすぐ傍である。
漁港前の海底の隆起によって、水深が浅くなり、漁船が出航できなくなったとのこと。そのため、海底面を掘り下げて必要な水深を確保する工事をしている。当初は5mの横幅で漁船の通るために海底の掘り下げ工事をしていたが、漁船が風を受けると大きくぶれ、5mの横幅では足りないので、いまは30mの横幅で掘り下げ工事をしているとのことである。今年中の工事完了は不可能な見通しであるとのこと。
また地震前は係留されていた漁船へ岸から乗り込めたが、地震によって岸が隆起したため、漁船は岸壁から2mほど低い位置に係留されていることになり、乗り込むのは容易ではなくなった。
高屋漁港の路面は地震によって割れて陥没していた。
道中で遭遇した、地震によって崩落した現場。
能登半島の道路には、地震による崩壊によって、片側通行になっている地点が数多くあった。路面も地震によって凸凹しており、車内での上下動が激しかった。
高屋漁港を出発し、金剛岬へ向かう道中の日本海を望む景色。
能登半島先端の金剛岬。ランプの宿社長刀弥氏に地震による影響などをご説明いただいた。
今回の地震によって1.5mほど隆起したとのこと。
この岬は、養老元年(717年)にインドから訪れた仙人が修行していた場所で、ここは隆起した場所であると指摘していたとの伝説が残っている。
寺家地区の珠洲原発の建設予定地であった地点。
海の水が透き通っており、日本海が広がる美しい景色。
地元住民の方々による30年近くにわたる粘り強い反対運動によって珠洲原発の設置は中止された。そのおかげで、今回の能登半島地震によって原発事故が起きることはなく、美しい景色を楽しめた。
以上
(文責:弁護士 大河陽子)
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